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コロナ禍以降の燃え尽き症候群(バーンアウト):データが示す傾向と企業が取るべき対策

Tags: 燃え尽き症候群, バーンアウト, メンタルヘルス, コロナ禍, リモートワーク, 人事戦略, ウェルネス

導入:コロナ禍が変えた燃え尽き症候群の様相

コロナ禍以降、従業員のメンタルヘルスは企業にとって喫緊の課題となっています。特に「燃え尽き症候群(Burnout)」は、多くの組織でその懸念が高まっており、人事マネージャーの皆様も従業員のパフォーマンス低下や離職リスクとして認識されていることと存じます。燃え尽き症候群とは、WHOが国際疾病分類(ICD-11)において「慢性的な職場ストレスに起因する症候群で、対処できていないもの」と定義しており、エネルギー枯渇感、仕事への精神的距離感の増大、職務遂行能力の低下の三つの特徴で示されます。

本稿では、コロナ禍以降に収集されたデータに基づき、燃え尽き症候群の傾向と、それが企業の人事戦略に与える具体的な示唆について考察します。

データが示す燃え尽き症候群の現状と傾向

コロナ禍以降、世界各国で従業員の燃え尽き症候群に関する調査が増加しており、その発生率の上昇が報告されています。

1. 燃え尽き症候群の増加傾向

ある国際的な調査機関が2021年に発表したレポートによると、従業員の52%が燃え尽き症候群を経験していると回答し、これはコロナ禍以前の2019年と比較して約9%の増加を示しています。特に、テクノロジー、医療、教育といった業界では、リモートワークへの急激な移行や業務負荷の増大が影響し、その傾向が顕著であるとの報告があります。日本では、厚生労働省の「労働安全衛生調査」や民間の調査会社によるデータでも、仕事や職業生活に関することで強いストレスを感じている労働者の割合が高水準で推移しており、その一因として燃え尽き症候群のリスク増大が指摘されています。

2. リモートワーク・ハイブリッドワークの影響

リモートワークの普及は、労働時間の境界線を曖昧にし、燃え尽き症候群を助長する要因となり得ることが複数のデータで示されています。 例えば、2022年のグローバル調査では、週に3日以上リモートで働く従業員の約6割が、オフィス勤務者と比較して「勤務時間外に仕事をしている」と回答しており、これが休息不足や疲労蓄積に繋がっていることが示唆されています。また、ハイブリッドワーク環境下では、チームメンバーとのコミュニケーション不足や孤立感が、精神的距離感の増大、つまり燃え尽き症候群の兆候と関連している可能性も指摘されています。

3. 特定世代・役職層への影響

データは、特定の世代や役職層が燃え尽き症候群のリスクに晒されやすいことを示しています。

トレンド考察と人事戦略への示唆

これらのデータと傾向から、企業の人事マネージャーが考慮すべき具体的なトレンドと、それに対応する人事戦略の方向性が見えてきます。

1. 予防的アプローチの強化

燃え尽き症候群の兆候が顕在化する前に、予防的なアプローチを強化することが重要です。ストレスチェックの結果を深く分析し、高ストレス者への早期介入はもちろんのこと、組織全体のストレス要因を特定し、職場環境の改善に繋げるデータ活用が求められます。 具体的には、以下のような対策が有効であるとデータは示唆しています。

2. リモート・ハイブリッドワーク環境下のメンタルヘルス支援

リモートワークが常態化する中で、新たなメンタルヘルス支援策が不可欠です。

3. マネージャー層への教育と支援

マネージャーは、部下のメンタルヘルスを把握し、適切なサポートを提供する上で重要な役割を担います。

まとめ:データに基づく継続的なモニタリングと改善

コロナ禍以降の燃え尽き症候群のデータは、その増加傾向と、リモートワークや特定の層への影響を明確に示しています。人事マネージャーの皆様には、これらの客観的なデータを基に、従業員のウェルネスを戦略的に捉え、職場環境の改善と予防的アプローチを強化することが求められます。

従業員のストレスレベルやエンゲージメントに関するデータを継続的にモニタリングし、その変化に応じて柔軟にウェルネスプログラムや人事施策を見直していく姿勢が、持続可能な組織運営と従業員の生産性向上に不可欠であると考えられます。データが示す示唆を活かし、従業員が健康でパフォーマンスを発揮できる職場環境の構築を進めることが、これからの企業経営の鍵となるでしょう。